歩いていこう、佐藤伸治のところまで

愛とは肯定の営みだ。肯定とは想像の営みだ。想像とはつながりの営みだ。
今はもういないあの男を想う時、僕らの心に彼は生きている。目を閉じれば星は広がり、息を止めれば鼓動は響く。想像することは何かを止める。時間を止め、誰かを留め、彼我の壁を越境する。僕の中に彼はあり、彼の中に僕がいる。
僕たちは星の子だ。なんだって飛び越える。夜空を仰げば幾千の星たちが輝いている。彼らは何万光年の彼方から訪れた何万年も前からの旅人だ。空間と時間を超えて届く微かな星たちの息づかいに詩人は僕たちの姿を重ねてきた。正しいことを話すのはいつだって詩人だった。僕たちは星の子だ。空間と時間を超えてつながりあう星の子だ。

愛とは詩情だ。詩情とは空想だ。空想とは道程だ。
君は彼を愛しているか?君が愛を持っているなら彼は君の中で蘇る。ブードゥーの秘術なんかじゃないんだ。僕たちは生まれたときから知っている。愛を抱いて生まれてきた僕たち。きっとあの人のところまで歩いていける。愛が道を照らしている。道の先はあの人のところだ。心と心を結ぶ愛。僕たちは人を愛するために頭の中に大げさなからくりを作り上げた。そして愛は心を作り、心をつないだ。

君は夢の中に過去を見はしなかったか。夢の中に未来を見はしなかったか。過去と未来は君に寄り添っている。眠ってごらん。ほら過去が、未来が、君の目に映る。心の世界に今は無い。あらゆる時間が溶け合った世界だ。そこでは想いこそが君の羅針盤だ。君の行きたいところを想えばいい。必ずたどり着くから。だから愛を想え。生を想え。

あの男はかく語りき。言葉が人を紡いだ。君は言葉をリフレインする。あの男をリフレインする。言葉が組み上げた詩情の海で何度もあの男と出会った。言葉は交わさなかった。ただ波間にたゆたった。ゆらりゆらり無重力の世界で、なににも縛られず言葉を紡いだ。それだけで満たされた。僕たちを柔らかに包み込む母のような海を紡いだ。愛。それしかなかった。あの男と目があった。その目は愛に溶けゆくような目をしていた。波はゆったりとリズムを刻んでいた。

君は泣くこともあるだろう。生きることには悲しみもつきまとう。耳を澄ませば嗚咽が木霊しているのがわかる。また一つ悲しみが生まれた。彼が死んだのは悲しいことだった。バックミラーに彼の姿は限りなく小さく遠のいていく。僕たちはどうしたって立ち止まれない。彼の笑顔がもうすぐ見えなくなる。だから思い出そう。彼を想えばいつでも僕の隣で「やあ」なんて気安く笑っているさ。僕は遠のいていく彼に手を振った。そして隣の彼の手をつかんだ。しっかりとつかんだ。僕は離さないから、と。君を思い出して生きていくから、と。

目についた星にでたらめに約束をした。僕らつながっていよう、まだ君とつながっていたいから。

思い出すことはなんだい
get love in season